南鳥島漂流記

航海日誌

《南鳥島》平成12年8月5日 念願の荷揚げ開始

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10日目
4:30波止場に行く、海は穏やかでT氏、船長(高倉 健に良く似た、いい男)が荷揚げ開始を決定。
5:00より朝食、久しぶりのお味噌汁も出て何故かうきうき。昨日調理士の二人が上陸したので、徐々に出る食べ物に力が入ってきました。
7:00より荷揚げ開始、海が穏やかならあっさり揚がるものですな〜。最初は生活用品の入っているコンテナ、5回目にやっとやっと待望の「鉄箱と外柵」庫外貯蔵庫はまだ、すぐにユニックに乗せて設置場所へ、庫外貯蔵庫の設置準備で一人は波止場へ、程なく庫外貯蔵庫が到着。作業開始です、庫外貯蔵庫をアンカーボルトで固定するので、コンクリート作り。プールへ海水を汲みに都合2回、20kgのセメント袋(骨材入り)5袋を使い2時間ほどで完成。(力仕事)この時、庫内温度は32度、この暑い場所で理想的な温度です。外柵は1時間ほどで完成。しかし足場が整地されていない木陰の為グラグラ、明日単管で補強する事とした。
警鳴装置取付、この場所は1日中日があたらない最高の場所。
海保より8月9日のYS11で帰れるとの話、うれしいね.. 『荷物と体重で一人90kg以内です』・・『え”』食糧事情もあって少しはダイエットをしているけれど、85kg+5kg。荷物のダイエットが必要です。宿舎に戻り、安全靴、工具類は鉄箱へ入れることに、それでも足りない分はスリムなH氏の余裕重量を借りることで合意。
11日目
外柵用の単管を資材置き場に取りに行く。4.5m7本、4m1本を使用しての外柵作り、2時間で終了。今日は風が殆どない、暑い暑い輸送中に禿げた所の白ペンキ塗りは..もったいないから明日に延ばす。冷蔵&冷凍コンテナが揚がったのでおかずのバリエーションが増える。うれしい
一番暑い時を見計らって庫内温度計測 32.5度 いけますね〜
12日目
曇り時々晴れ、波止場で見た海は今までで一番穏やか、朝涼しい時間にペンキ塗り。どんなに時間をかけても1時間が限度、あとは寝てようかな。朝の時点で定期点検、全てOK。昼前に23人分のお弁当作りのお手伝い。結構はまります。このころから急に風が強まりだし突然の天候急変により作業中止。
時折強い風が吹き、雨も45度くらいの角度で降る。仮設食堂に滝が出来、あわてて補修。降った雨は水たまりにならずそのまま地面に吸収される、珊瑚礁で出来ている島だから? この雨は夜半過ぎまで断続的に降り続く。
13日目
4:00 昨日より波は穏やかになってきたものの「うさぎ」がそこここで跳ねている、作業再開に至らず。
7:30 雨もあがったのでペンキ塗り開始、庫外貯蔵庫×2、鉄箱の蓋。時間をかけて確実に。
昨日の雨のせいか、「アフリカ・マイマイ」そこここに出没、歩くときには注意が必要です。個人差は有るけれど、小さいアリも噛まれると腫れる様で注意が必要です。
14日目
波はおさまって来ているが中程度の波が断続的に押し寄せてくる、貨物船見えず。今日も荷揚げ作業中止 硫黄島付近に熱低が発生、そのため風強し。待望のYS11到着、海自が最初で次は本命海保のYS11が無事に着陸うれしいもんですね。
もう気分は完全に娑婆気分。残留組から『目障りだから日陰を歩け』といわれ『じゃあ涼しい日陰を歩きます』などと減らず口をたたくのも今日が最後。気心が知れてからの別れは甘酸っぱいものがあります。芝生の上で水をまいている!本当に水?なめてみたら塩辛い。雑草が生えないように海水を撒いているそうです。
15日目
海上保安庁のYS11で離陸、南鳥島が一望出来ました。高度をとったあと一路硫黄島へ、とても賑やかな飛行機。昼前に硫黄島到着、硫黄島で海上保安庁の方達と整列して休憩所へ、自動販売機が有りますよ。文明だ〜。1時間後一路羽田に向け離陸、小笠原の島々を左手に見て昼過ぎ羽田空港到着。東京モノレールの「整備場駅」から帰宅の途についた。
自宅で飲んだビールのおいしいこと、久しぶりでした。
《15日を振り返って》
南鳥島では、電気で生活を維持しています。コンロ、水、冷房もすべて発電器でまかなっています。畑が無いため、食料は定期的に飛行機で送られてきます。私たちもそのことを承知して行ったわけですが、持参した食料が荷揚げ出来なくなったとたん余裕がなくなる厳しい環境でした。実際、海上保安庁、海上自衛隊のご厚意で食料等をわけていただいたのですが、駐在している方達へ影響がでないわけはないでしょう。普段当たり前のように電気、ガス、水、食べ物、飲み物が簡単に手に入る生活は「なんと贅沢なのか」と、帰りの電車の車窓から見えるビル群を見ながらしみじみ思いました。
 生活について
●アフリカ・マイマイには、手をふれたり踏みつぶしたりしないこと。寄生虫がいる、口から入り血管を伝って脳に入る、対策無し。
●小さなアリ、噛まれるとかゆみ発疹が出る。人によっては発疹が大きく広がる。草地、木の下での作業は注意が必要。食べ残しはビニール袋へ、ジュースの空き缶は必ず洗って捨てる事、アリが大挙して群がります。
●鳥、南鳥島と言う位なので鳥の群生地有り。鳥はアジサシが殆どで若干メジロがいる模様(未確認)
●昔からあった木「モンパの木」樹高が低くほぼ島全体を見渡せた。最近は様々な木が茂り、島が一望できなくなっている。
●その他の動物、ネズミ(ハツカネズミの様に小さい)、猫が生息している。ネズミ&猫の目撃例有り。
●魚貝類、魚は食すとシビレの出るもの有り。良く知っている人に聞いて食すこと。サザエは肉の部分のみ食すこと、自分で食べる分を越えて採取してはいけない。
●海自の貯水場の奥に3本だけ有るバナナは採取禁止です。
●遊泳は指定地域(主に珊瑚礁のリーフの中)以外は早い潮流が流れているため禁止です。
 
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